フォンタンの会in広島開催報告

日時:平成25年11月16日(土)
開催地:広島市福祉センター会館
神奈川県立こども医療センター
心臓血管外科
麻生俊英

 11月16日に広島で「フォンタンの会」を開催しました。
 フォンタン手術を受けたこどもたちの運動能力は通常児と比べると劣ります。しかし、必要以上に運動を制限する必要はありません。適度な運動は必要です。フォンタン手術を受けたこどもたちに引きこもらず積極的に外に出て遊び、運動し、体育にも参加してもらい、フォンタン手術によって受けた生を精一杯享受してもらいたという願いのもとに2年前より始めました。運動を強要するのではなく好きな運動を無理せず積極的に行い、またその過程で自分の限界にも気づいてもらいたいからです。しないでできないと言うのではなく、してみて自分の限界を知るのとでは大きな違いがあります。気持ちの持ち方、生き方への姿勢が異なります。
 全国のフォンタン後のこどもたちやその家族にこのことを伝えたくて、有志を募って「フォンタンの会」を全国各地でおこなう活動を始めました。皆、手弁当で参加してくれています。頑張っているフォンタン手術後の児を応援する会です。「何ができない」ではなくて、「何ができた」、「こんなことをしている」、「あんなことがやりたい」という前向きなこどもたちを支援する会にしたいと思っています。
 これまで、福岡、京都での日本小児循環器学会で取り上げてもらいました。京都での市民公開講座は大盛況でした。その後、松山、長野で開催しました。また、神奈川県立こども医療センター、大阪府立母子センター、兵庫県立こども病院ではそれぞれ独自に「フォンタンの会」をおこなっています。
 今回の広島でのフォンタンの会には、当センターからは常連の私、麻生と小児専門看護師の権守礼美がフォンタン手術について講義、そしてオブザーバーとして循環器内科の本田茜先生、渡辺友博先生、心臓血管外科の大中臣康子先生が参加しました。プログラムを巻末に添付しましたが、会の内容は医療者からの情報提供、キッズヨガの実践、そしてフォンタン手術を受けた患者さんからのメッセージなどで構成されています。このうち、患者さんからの生の声を聴くことが「百聞は一見に如かず」、もっとも、フォンタン術後の患者さんやその家族、さらには医療者の心に響くようです。今回の広島での会では、中学生、大学生、社会人、3名のフォンタン術後の患者さんにこれまで経験したこと、困難であったこと、これからの希望など思いを発表してもらいました。
そのうちの一人、松山から参加してくれた大学生、紙田恵治君の発表文をホームページに掲載させてもらいました。
 ここにおられる麻生先生は、約20年前から年に1回。1週間夏休みを利用して、インドネシアへ医療ボランティアに行かれており、「大きくなったら一緒に行こう」と誘ってくれていて、インドネシアに行くということは、僕の夢の1つでした。そしてこの夏念願かなってインドネシアに行くことができました。
 これからインドネシアの旅をお話したいと思います。
 インドネシアへは、毎年10人以上の医療関係者の方と一緒に行かれているそうですが、今年は僕と女医さん・看護師さんの4人でした。成田から約7時間でインドネシアに着きました。空港にはインドネシア大学付属病院のユーズフ先生が迎えにきてくれていました。ユーズフ先生は、インドネシアで先天性心疾患の手術ができる数少ない先生のお一人です。病院に着くと直ぐにカンファレンスが始まりました。病院でのコミュニケーションは英語ですが、僕は得意な方ではありません。カンファレンスの場で、エコーやレントゲン・カテーテル検査の映像を見ていると、どこが悪いのか何となくわかるときもあり、英語はわからないのに、内容が何となく分かるという謎の体験をして何だか可笑しかったです。
 僕はインドネシアを訪問する前から、医療関係の学生でもない僕に何ができるだろうと考えていました。術前・術後の子供たちと折り紙で遊んであげよう、ルービックキューブもやって見せてあげよう、何よりも、手術をした子供たちの悩みを聞いてあげ傍にいてあげよう、その子供たちのご両親にも僕自身を見てもらって、心臓が悪くても、ペースメーカーを入れていても、学校に行って勉強ができるし、スポーツ選手は無理だけど、自分のペースで運動もできるし、こうやって外国にも行けるから大丈夫だよ!ということを分かってもらい、安心と将来への夢や希望を持ってもらい、一生心臓病と付き合っていく勇気を持ってもらうこと。これが、先生方にはできないけど僕には出来ることじゃないかと思いました。
 2日目、僕たちはハラパンキタ心臓病院を訪ねました。カンファレンスに同席したあと、麻生先生と現地の看護師さんの通訳で、フォンタン手術後13才の女の子と話をしました。彼女は「運動ができないと周りの人の目を気にしてしまう。」「自分は孤立している。」という事を言っていました。僕は、出来ることと、出来ないことを話して、皆に理解してもらうことが大切とアドバイスをしました。あと僕が大学で数学を勉強していると知り、どうしたら数学ができるようになるのかと聞いたので、僕の技術を丁寧に教えてあげました。
 午後は、手術の見学をすることができました。僕はいつも手術を受ける側ですが、見学すると手術の時間の感覚が違いました。先生の手術はとても速かったです。日本では医学生ではない僕が見学することはできないので、とても貴重な体験でした。僕の手術もこうやってしてもらっているんだな・・と思いました。
 3日目は、インドネシア大学付属病院で、折り紙や塗り絵、風船でフォンタン手術後の子どもと遊びました。僕はその子とご両親に、僕の手術の傷跡を見せ、自分も心臓手術をしたことを分かってもらいました。心臓の手術をした仲間と分かってもらうには、こうすることが一番いいと思ったからです。ご両親は、「手術をした後はこんなに元気になれるんだ」ととても喜んでくれました。午後は、オペ室とICUの見学をしました。とても立派で、大きな声では言えませんが、僕が通っている日赤より凄かったです。
 4日目は休養日で、動物園に行きました。とても広く、テレビや本でしか見たことがない「コモドオオトカゲ」を見ることができたし、色々な蛇を触ることもできました。蛇がこの世で一番嫌いなお母さんには怒られましたが・・日本から来たとわかると、とても歓迎してくれました。
 5日目、おととい会った男の子と再会しました。彼は凄く元気になっていて、彼のお父さんが「子供も自分もこれから生活していく上で、勇気と希望を持つことができた。ありがとう。」と言ってくれました。この時僕は、僕が話をしたことで、彼らが心臓が悪くて元気な子と全て同じことができなくても大丈夫という安心感と、将来の夢や希望を持つことができ、一生心臓病と付き合っていく勇気も持つことができたんだなと思い、インドネシアに来て僕の仕事ができたと嬉しくなりました。そして今度は、僕と話した女の子や、この男の子、ご両親が、僕の代わりにこれから手術を受ける子どもやご両親に、安心と勇気を与えてくれて、また次の子へと繋がっていけばいいな、うん、きっとそうなるはず!と思いました。
 6日目はボゴールという大統領が休日に過ごす別荘に行きました。本当はカメラ禁止・立ち入り禁止の所もあったけど、日本から来たと分かるととても歓迎してくれて、特別に見学させてもらえ、公にしないという約束で写真も撮らせてくれました。動物園でもそうでしたが、日本から来た僕たちをとても歓迎してくれ、とても親切にしてくれました。何でも大統領の奥さんだった人が日本人だったそうで、日本人が大好きとのことで、この事をお母さんに言うと「あー、デヴィ夫人」と言っていました。
 インドネシアはイスラム教なので食事に豚肉は出ません。お肉はトリ肉ですが、これが本当に旨い!辛いものは大の苦手で心配してたけど、辛さは自分で選べるし、魚もおいしいし、何といってもジュースが最高でした。ユーズフ先生もディッキー先生や他のレジデントの方、看護師の方皆、医療関係者でない僕の事を歓迎して下さり、「ヨシ、医者にならないか?」と言われましたが、僕には数学博士になるという夢があるので、お断りしました。来年もまたおいでと皆さん言って下さり、約束をしたので、先生、また来年も僕を連れて行って下さい。お願いします。
 僕たちが宿泊したのは、病院内のホテルでした。日本のファミリーハウスのようなものかなと思いました。日本では守る会があり、相談にものってもらえ、お金の心配をすることなく安心して手術を受けることができますが、インドネシアでは、お金がなければ病院にさえ入れてもらえないそうです。僕は手術を受けることができない子どもたちの為の基金があることを知ってから、将棋の大会で得た賞金やお年玉を少しずつためて、それでもわずかな金額ですが募金をしています。生まれた国や貧富の差で、助かる命も助からないなんてとても悲しいし、僕達だけよければいいというのでは駄目だと思ったからです。
 インドネシアに来て驚いたことが2つあります。渋滞が凄く、10分で2キロしか進まない。歩いたほうが速いのに、彼らは歩かないんです。もうひとつ、朝7時から9時の間車に3人以上乗ってなかったら、罰金をはらわなければいけないとか。渋滞を防ぐためらしいけど、日本では考えられない法律があった事でした。こうしてあっという間の1週間が過ぎ、日本にいてはできない貴重な体験をたくさんして、体調を崩すこともなく無事に帰ってくることができました。来年は、せめて通訳なしで英語がすらすら話せるように、そしてインドネシア語も少し話せるように勉強をして、子供たちやご両親に夢と希望を持ってもらえるようにしたいと思っています。
 ご清聴有難うございました。

フォンタンの会 in ひろしま [ プログラム ダウンロード ] PDF 714 KB
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